平成27年度 仙台市連合町内会長会会員研修会が開催されました
平成27年6月2日市内パレスへいあんにおいて、平成27年度仙台市連合町内会長会定期総会に引き続き会員研修会(会員101名、市職員等15名出席)が開催されました。
今回は、平成25年度から市内各地区で取り組まれた「地域版避難所運営マニュアルづくりと防災訓練の事例」について、5つの区の代表事例を学び合いました。
5つの事例からは、東日本大震災の経験や教訓、それぞれの立地条件を踏まえた地域版避難所運営マニュアルの内容、そしてできあがったマニュアルをもとに実際に防災訓練を行って、その改善点をマニュアルの改訂につなげていることなどをわかりやすく伺うことができ、参加者にとってとても有意義で参考になる研修会となったようです。
以下に、5つの事例の概要をご紹介します。
≪泉区高森連合町内会の事例≫
高森連合町内会の事例では、川合弘典会長から「1地区で複数の避難所(指定避難所と補助避難所)を運営するケース」と題して、連合町内会の地理的概況や組織などについての説明の後、
@東日本大震災当日と2日目の状況
A高森地区内での今後の災害対応
B避難所開設・運営の支援マニュアル
C防災訓練のこれまでとこれから
について次のことを中心に説明がありました。
〇高森小学校に約150名が避難し、教職員とともに避難所を運営。年輩よりも若い方々の避難が多かった。対策本部は2日目から起動し、役割分担が進みほぼ円滑に運営できるようになった。
〇震度5強以上の地震が発生したら各町内会長と高森コミセン館長は各避難所に集合し、東日本大震災暗射の受け入れ準備をし、指定避難所である高森小学校と補助避難所である高森コミセンへの避難者区分(丁目で分担)に応じた受入れを行う。
○各町内会副会長は、担当地域内の被害状況を把握し、各班長に住民の安否確認と避難誘導にあたらせる。
○高森連合災害対策本部は、高森コミセン内に置くとともに、各種団体ごとにパトロールや交通整理などを担当する。各避難所としての避難者名簿作成、救護、物資配分、炊き出しなどの係分担は町内会ごとに防災組織を作成し担当する。
○備蓄品の整備とともに、災害時の生活用品や燃料などの供給について、事前に地区内の企業等に協力を要請しておく。
○地域版避難所運営マニュアルを作成したことにより、以前は単位町内会ごとに行っていた防災訓練を、避難所の開設・運営を含めた連合町内会の防災訓練に変更したなど。
≪若林区南小泉地区町内連合会の事例≫
南小泉地区町内連合会の事例では、野上忠志会長から「1つの指定避難所を複数の地区で運営するケース」と題して、連合町内会の地理的概況や組織などについての説明の後、
@東日本大震災発生時の対応状況
A指定避難所開設までの経緯
B開設後の状況
C複数の地区で避難所運営をして良かったこと
D複数の地区で避難所運営をして困ったこと
E避難所運営を振返って
F現状
について次のことを中心に説明がありました。
〇地域内に4つの指定避難所(中学校1校、小学校4校)と1つの補助避難所(古城コミセン)があり、指定避難所は南小泉地区町内会連合会と若林地区町内連合会がそれぞれの単位町内会を学校(指定避難所)に応じて振り向けて担当するが、どちらの連合町内会が責任をもつかを話し合いで決めている。
○東日本大震災の際は、古城小学校(避難者約300名)は、若林地区町内連合会と古城小学校が中心となって運営し、古城コミセン(避難者約200名以上)を南小泉地区町内連合会とコミセン市民委員会が中心となって運営したが、古城コミセンで情報の共有を図った。
○2つの避難所運営の役割分担を明確に行ったことで、トラブルが少なくスムーズな運営ができた。
○古城コミセンが指定避難所でなかったことで、隣の防災センターの非常時の備蓄品をしようできなかったことや、直接支援物資の配給がなく、小学校から食料等の運搬にあたるマンパワーの確保が大変だった。
○東日本大震災の経験を生かして、地域内4カ所の指定避難所ごとの単位町内会の振り分けを行うことや、指定避難所ごとの地域防災組織を立ち上げることで防災訓練などが円滑に行えるようにしている。南小泉地区町内会連合会としては、各々地域防災活動に助成を行うことにしている。
≪宮城野区燕沢学区町内会連合会の事例≫
燕沢学区町内会連合会の事例では、大西憲三会長から「指定避難所、補助避難所、地区避難施設を運営するケース」と題して、連合町内会の地理的概況や組織などについての説明の後、
@3・11、4・07の対応状況(当時は整備されたマニュアルがなかった。)
A地域防災連絡会立ち上げによる避難所運営マニュアルづくり
B新しいマニュアルによる最初の防災訓練
Cその防災訓練を踏まえた地域版避難所運営マニュアルの見直し
D新たなマニュアルによる実施予定の防災訓練の内容
Eいざという時のためのわかりやすい手順
について次のことを中心に説明がありました。
〇最初の地域版避難所運営マニュアルを平成26年6月に燕沢学区地域防災連絡会(学区内各種団体、施設等で構成)を立ち上げ、10月に完成させた。
〇一時避難所は、各町内の公園8か所、がんばる避難所は集会所6か所、指定避難所は燕沢小学校、補助避難所は燕沢コミセン、福祉避難所は特別養護老人ホーム、その他の施設として燕沢児童館を位置付けている。
〇マニュアルは、防災訓練の中で避難所運営訓練を実施して毎年改訂している。
〇避難所運営マニュアルを作成する前は、屋外での訓練が主体でマンネリ化していたが、東日本大震災の発生により、地域版避難所運営マニュアルを作成し、一時避難所への避難 ⇒ 指定避難所・補助避難所・福祉避難所への移動 ⇒ 避難所開設・運営訓練という形での訓練をするようになった。
〇6月6日(土)は、初めての夜間訓練を実施する。
〇当日も、「日頃の準備(安全対策、家族での確認、黄色のハチマキ活用、非常持ち出し品の整備、避難行動の確認)」⇒ 「災害発生時の対応(自宅の状況確認、一時避難所への避難、指定避難所への避難の必要性の判断、指定避難所の開設・運営)」の基本的な流れを確認しながら所定の時程に従って訓練を行う。
≪太白区八本松連合町内会の事例≫
八本松連合町内会の事例では、三野宮利男会長から「マンション管理組合と協力して運営するケース」と題して、連合町内会の地理的概況や組織などについての説明の後、
@3・11以前の防災訓練の内容
A3・11の東日本大震災への対応状況
B東日本大震災後の今後の災害対応の備えの検討
C八本松連合町内会地域防災体制
D地域版避難所運営マニュアル策定後の防災訓練の内容
E今後の課題
について次のことを中心に説明がありました。
〇3・11以前の防災訓練は、一時避難所に避難の後、指定避難所の八本松小学校に集団で移動し、避難所運営以外の各種屋外訓練を実施。
〇3・11の際は、指定避難所に150名、八本松市民センター650名が避難。発災当初の2日間は小学校教職員、市民センター職員、地域住民有志で避難所を運営。3日目から連合町内会として各避難所に災害対策本部を設置して組織的運営開始。
〇平成23年5月に地区内各種団体、施設等で構成する「八本松地域防災サミット委員会」を設置し、地域防災体制づくりを協議。途中からマンションの町内会も参加。
〇町内会組織がないマンションがあるが、子供会を隣接の町内会で面倒を見ている所は、子供と大人が防災訓練に参加するしくみを導入。
〇八本松連合町内会地域防災体制は、地区内14の町内会、各種団体、学校、市民センター、地域包括支援センターで構成。
〇平成26年度に地域版避難所運営マニュアル策定後の防災訓練として、各町内会の自主避難訓練、連合町内会・施設管理者の連携による避難所開設運営訓練、要援護者への食料配布訓練を実施した。訓練には、1千名を超える住民等が参加した。
〇今後の課題として、「各町内会での自主防災組織の体制づくり」「夜間帯の防災訓練」「避難所開設後の具体的運営の訓練」「大規模マンションとのコミュニティづくり」などがある。
≪青葉区国見地区連合町内会の事例≫
国見地区連合町内会の事例では、吉澤秀晃会長から「外国人や観光客等の避難者を想定して運営するケース」と題して、連合町内会の地理的概況や組織などについての説明の後、
@3・11発生時の避難所の状況 ⇒ 想定外で混乱
A地域役員及び住民の意識変革と防災への取り組み
B行政や大学への要望
C外国人住民対象の防災教育・訓練
D国見地区連合町内会だより「震災特別号」
について次のことを中心に説明がありました。
〇指定避難所である三条中学校とその周辺には、6町内会約2千世帯の他に東北大学国際交流会館があり、留学生寮に約400名(原則1年間のみ居住)と家族寮に約300名が生活している。この他近隣アパートに留学を続ける学生・家族が多く暮らしている。
〇3・11の際は、指定避難所に身を寄せた1,600人以上のうち、約6割が外国人(国籍多様)だった。出身国の違いにより生活習慣・宗教・マナー・食生活も様々で、避難所内で不信感が生まれたり、外国人のあまりの多さに驚いたりして地域住民の中には自宅へ戻り始める方々も出てきた。3日目には避難者の9割が外国人という状況になった。
〇避難所運営にあたった町内会役員は、当惑が大きかったが精一杯の対応をした。当初は外国人に対する不信感があったが、お願いするとトイレ掃除やプールからの水汲み、救援物資の運搬・配布などを自発的にやるようになった。
〇今回の経験から、外国人の受入れを想定した避難所運営と防災訓練を行うようになり、「言葉の壁を越えるための話し方」「多言語シートの活用」「避難所運営の担い手への留学生の通訳としての活用」などを図っていくことにした。なお、留学生会館に日本語がわかる防災担当者(防災リーダー)制度が生まれた。
〇行政、大学への要望として、「東北大学国際交流会館については、東北大学が責任をもって単独で敷地内に避難所開設をすること」「留学生に対して防災訓練の実施や安全教育を行うこと」「各区に外国人の避難所も1~2か所開設すること」「小・中・高に配置されている国際教育担当教員やALT(外国語指導助手)を指定避難所の指定動員に活用すること」を提起している。
〇今後の課題として、「各町内会での自主防災組織の体制づくり」「夜間帯の防災訓練」「避難所開設後の具体的運営の訓練」「大規模マンションとのコミュニティづくり」などがある。
〇本年5月16日(日)に東北福祉大学を会場として、東北福祉大学と仙台観光国際協会共催で国見地区や仙台市内在住の外国人住民を対象に、防災・減災の意識向上と地域住民と外国人住民のコミュニケーションを深めるための「防災教育・訓練」が行われた。
〇国見地区連合町内会だより「震災特別号」(平成23年5月22日発行)で、三条中学校における避難所運営の状況、苦労、従事者の活躍ぶり、避難者として感想やお礼などについて地区内にお知らせした。
掲載日:2015/06/17